
今回は、引っ越しのときのお話です。
今振り返って見ると、引っ越しにもASD(自閉症スペクトラム症)の
特徴が出ているなと思います。
はじめに:引っ越し、それは夫婦の価値観が露呈した瞬間だった
今でも思い出すと、胸の奥がぎゅっと苦しくなるあの引っ越し。
上の子が4歳、双子の娘たちはまだ2歳でした。私はフルタイム勤務で毎日がめまぐるしく、育児と仕事の両立だけでも精一杯。
そんなときに決まった新居への引っ越し。
でも、夫は「洗濯機と冷蔵庫以外は俺と親でやる。お前は手伝わなくていい」と、当然のように言い放ちました。
最初はありがたいのかと思いました。けれど——その言葉の裏にある「妻の状態への無関心」や「自分だけの計画性」に、私はだんだん追い詰められていきました。
子ども3人、仕事もフルタイム。それでも夫は「業者は高いから使わない」
引っ越し先は、道を一本挟んだ向かいのマンション。距離は近いけれど、荷物の運搬はやはり大変です。
私は当然、引っ越し業者に頼むものだと思っていました。
なぜなら私は仕事をしていて、育児にも追われていて、心身ともに余裕がなかったから。
「お金が多少かかっても、時間と体力を買いたい」というのが私の本音でした。
けれど夫は、
「距離も近いし、業者は繁忙期で高い。洗濯機と冷蔵庫だけ業者に頼んで、あとは自分と親で運ぶ」と即断。私の話を遮るように、その方針を勝手に決めてしまったのです。
育児と仕事で限界の私に、夫は“自分の計画”を押し通した
夫の「お前は手伝わなくていい」という言葉は、一見すると思いやりがあるように聞こえました。
でも、それはただの自己完結な優しさで、私の現実や気持ちに寄り添ったものではありませんでした。
荷造りは当然私の担当。誰もやってくれるわけではありません。
フルタイムで働き、保育園への送り迎えをこなし、寝かしつけたあとの夜に黙々と段ボールに物を詰める毎日。
「もう限界…」と何度思ったか分かりません。
夫には、「引っ越し業者を頼んで」「高額なら日をずらすという選択肢もあるのでは」と何度か伝えました。
でも、その声は全く届かず、自分の中で決めた“最適解”を変えることができない夫に、私は深い孤独感を覚えました。
「これ、まだ使える」——夫のこだわりが生む“不要物の引き連れ移動”
私にとって、引っ越しは断捨離の絶好のチャンスでもありました。
でも、夫にとっては“まだ使えるかどうか”が判断基準。
私が「もういらないよ」と言った、シャンプーを置く3段の棚。
「今回のお風呂場は棚がついてるし、不要だよね」と伝えたのに、
夫は「使えるから持っていく」と言い、最終的には寝室に設置されました。
さらにクローゼットが完備されているにもかかわらず、洋服ダンスもそのまま持って行くことに。
当然、収納は重複し、結果として着ない服が増えていく始末。
この“もったいない精神”と“判断の硬直さ”に、私は何度も言葉を詰まらせました。
高齢の義両親を前に、結局私も動く羽目に
当日、70代の義父母は本当に頑張ってくれていました。
でも、段ボールを何往復も運び、表情は明らかに疲弊していました。
「私は手伝わなくていい」と言われたはずなのに、
高齢の方が汗だくになって動いている姿を前に、私だけ何もしないなんて無理でした。
結局、私も現場に出て荷物を運び、引っ越しが終わった頃には、疲れ果てていました。
「自分が終わったら、それで終わり」——夫との温度差にモヤモヤ
引っ越しが終わったあと、夫と義両親は外食に出かけ、ゆっくり休んでいました。
でも、私は休む間もなく、保育園へのお迎え、夕飯づくり、子どもたちの寝かしつけと、一人だけ“日常”に戻される感覚。
同じ引っ越しをしていたはずなのに、なんで私だけこんなに疲れているのだろう。
この温度差、責任の偏り、そして誰にも理解されない心のしんどさに、涙が出そうでした。
おわりに:融通のきかなさは、ASDの特性だったのかもしれない
今になって振り返れば、あのときの夫のこだわりや一方的な進め方は、ASD(自閉スペクトラム症)の特性によるものだったのかもしれません。
- 自分のやり方への強いこだわり
- 想定外を嫌い、計画を変えられない柔軟性のなさ
- 他人の感情や負担に気づきにくい特性
夫がASDだとわかるまでの経緯については、第10話でも詳しく書いています。
当時はまだ診断もついておらず、ただただ「なんでこんなに話が通じないんだろう」と思っていました。
あの引っ越しは、夫婦の「価値観の違い」が最も色濃く出た出来事でした。
でも同時に、私が“ひとりで頑張るしかない構造”の中にいたことを強く実感したきっかけでもありました。
同じように、夫のこだわりや非協力的な態度に悩んでいる方がいたら、どうかひとりで抱え込まないでほしい。
「それ、おかしくない?」と心が感じたなら、それは間違っていないと思います。
「誰にも相談できない…」「身近に頼れる人がいない…」
そんなときは、オンラインで気軽に話せるカウンセリングという選択肢もあります。
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